だって美味しいんだもの

旅の記録や日々の備忘録。なかなかダイエットが続かない

そろそろ人が作ってくれたご飯が食べたい

 

なかなか外食がままならない日々を癒やしてくれているものが料理エッセイだ。分類として存在しているのかはわからないけど、レシピ本や飲食店のレビュー本ではなく、エッセイ。その手のプロが書いていない方がなお良い。

 国語の教科書で読んで、著者はおろか文章の落とし所すら覚えていないのに、心に残っている一節がある。海外で出されたスープを日本人である著者はおいしくないと感じたが、現地の人々にとってはまずそうに見えないから、ここではこの味が一般的でおいしいものとされているのだろう、といった内容だった。

 この文章を読んで以降、何かしら口当たりのよくないものに遭遇しても「私の口に合わないだけ」と捉えるようになった。これまでの食生活、文化や宗教、気候が人によって違うのだから、感じ方はそれぞれ。そう思うからこそ余計に「これ美味いぞ。食ってみろ」みたいな文章よりも、料理を作った人への感謝やその人のストーリーがあって「おいしい」「あたたかい」といった文章のほうが、想像力もより掻き立てられて楽しく読めるものだ。

さて、今回は覚え書きも兼ねて気に入っているエッセイを5冊紹介する。皆様の癒やし、もしくは料理の妄想力の糧になれば幸いだ。

1.ごはんぐるり/西加奈子

語り口がところどころ関西弁(文章であって「弁」で良いのだろうか)で軽快に、そして我々関西人にとっては特に馴染みやすい。だってごはん食べてる時に「(うまっ!何使ってんのやろ)」って思うことはあっても、すまし顔で「これは〇〇を使っていて旨味が詰まっているね」とか言わんし、素直に「おいしかったです」と顔に出るタイプとしては「わかる〜〜〜」な内容なのだ。

それでいて子どもの頃にエジプトに住まれていた西さんの経験談なども混ざるので、遠い異国の話をしているような話もあり、旅をしてみたくもなる不思議な本。

中でも好きなのは「活字のごはん②」なのだが、こういうところに文字と食事の趣を感じるのである。

2.海苔と卵と朝めし/向田邦子

この日の丸弁当のような表紙と題字も好きだ。こちら、ありがたいことに向田邦子さんのありとあらゆるエッセイの中から「食いしん坊」エピソードだけを集めてくれている。

「海苔巻の端っこ」が印象的なのは「その話からそこへ行き着くのか!」という驚きが最大の理由でしょうが、随所に出てくる食事の描写に「執着にも似たこだわりってあるよねえ」とついつい重ねて読んでしまうのです。

3.NYの「食べる」を支える人々/アイナ・イエロフ

こちらはちょっと毛色が違う。エッセイと言うよりはジャーナルに分類されるのだろうか。作者がニューヨークの飲食店やホテルレストランなどで経営者や料理人に聞き書きをしたものになる。

「この本ではニューヨークの食の世界に商店を当てていますが、書きたかったのは何よりも『人』です」と、まえがきにあるのだが、まさに食事だけでなく思想や宗教などを読み取ることができる。どう美味しいかを聞き手目線では書いていないので純粋に作り手の情熱や生活だけなんですよね。これを知れば、ますますニューヨークでの食事を楽しめると思う。というか食べに行きたくなるので、今は読むのしんどいな。

4.いとしいたべもの/森下典子

各エピソードに登場する絵がとにかくおいしそうなのだ。つやつやのオムライス、焼き茄子の何とも言えない色合い(あれが美味しいのだが)、その他諸々…

文中の描写も擬音語やら何やらで脳内にその絵が浮かぶ。ああ、食べたい、、、ありとあらゆるシズル感で訴えかけてくるので、何を食べようかしらというときにふと思い出すぐらいが良いのかもしれない。ちなみに続編の「こいしいたべもの」も引き続きおいしそう。

5.残るは食欲/阿川佐和子

最後はこちら。シリーズに「娘の味」という作品もあるのだが、いずれも父親とのエピソードがおもしろい。食エッセイでありながら阿川家のお話という感じ。

そして勝手なイメージだが、阿川さんならこうやって喋ってそうだなと想像できる内容です。そして食事ってやっぱり楽しいなあと思わせてくれる。あんな賢そうな人でもやっぱり食事は好きなんだな、と。

 

この記事を書こうと思ったきっかけは、先日残業をして晩飯難民になったとボヤいていたら、自炊するしかないね!と言われたこと。自炊?仕方なく毎日しとるがな。でも一人暮らしの皆さんはそろそろテイクアウトの弁当と自分で作った飯に飽き飽きしていることだろう。というか家事をしている人全員か。私もだ。毎日自分の味付け天才ちゃう!?って自画自賛するのそろそろキツいねん。

 人生80年1日3食としたら一生にする食事の回数は約88000回らしい。ということは、食事って人生で経験することの大部分を占めているのではなかろうか。そんなに回数があるならハズレの日があっても仕方ないけど、できれば美味しいものを多く食べたい。

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明けたらまず焼き鳥食べに行きたい

でも、今は自分の想像力の範疇でしか食べられなくて「あれ食べたいな、これ美味しそうやな、この料理作ってみようかな」っていう楽しみがない。友人と食事に行って美味しそうに食べてるのを見るのも好きだけど、今はそういうのも難しい。

ちょうど通勤時の本が切り替わる時期になったので(電車で座っていられる時間が10分ほどしかなく、長編だとなかなか進まず、頃合いを見て)新しい本を買うつもりなのだが、今自分が求めているジャンルの再認識ということで。

それでは、今回はこのへんで